
オランダの人気スポーツは…?
オランダでは一般的にスポーツが盛んです。オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)と中央統計局(CBS)の2023年の調査によると、4歳以上の国民の56%が週1回以上スポーツ活動に参加しています。
内訳をみると、オランダ人に最も人気なのはフィットネス。週に1回以上スポーツをする人の約4分の1がジムに通っています。2番人気はジョギングです。空いている時間に自分のペースでできる運動が好まれているようです。
一方、競技スポーツで筆頭に挙がるのは、サッカーです。大人にも子供にもダントツ人気で、その競技人口は120万人に上ります(オランダの全人口は約1,800万人)。広い芝生のサッカー場が至るところに見られ、平日の夕方や週末には大人も子供もサッカーのトレーニングに励んでいます。

もちろん、サッカー観戦も大人気。シーズン開幕中は、国内プレミアリーグの「エルディヴィジ(Eredivisie)」や欧州の「UEFAチャンピオンズリーグ」などの試合が相次ぎ、ファンたちはサッカースタジアムやテレビでの観戦に大忙しです。また、サッカーの「FIFAワールドカップ」や「UEFA欧州選手権」にオランダが出場するときは、街中がオランダカラーのオレンジに包まれます。
サッカー以外には、テニスやフィールドホッケー、乗馬、スケート、水泳などがオランダの人気競技スポーツです。一方、野球はあまり見聞きしませんが、実はオランダにも160あまりの野球クラブが存在し、約2万人のメンバーが練習や試合に励んでいます。

欧州ではトップ、野球オランダ代表
オランダ王立野球ソフトボール連盟(KNBSB)によると、オランダにおける野球の歴史は、20世紀初頭に遡ります。アムステルダムの体操教師 J.C.G. グラセ氏が休暇中に訪れたアメリカで野球に触れ、アムステルダム身体教育連盟にこのスポーツを紹介したことがその始まりとされています。1911年に初の公式戦が行われ、翌年にはKNBSBが設立されました。
現在のトップリーグである「ホーフトクラッセ」は、プロアマ混成リーグとして運営され、上位チームの多くはプロ契約選手で構成されています。
特に、カリブ海に位置する旧オランダ領のキュラソー島やアルバ島は野球が盛んで、これらの地域からの移民がオランダ野球の発展に大きく寄与しています(現在も両島は自治領としてオランダ王国を構成しています)。オランダ代表チームの選手もこれらの地域の出身者が多く見られます。
オランダ代表は、「WBSC世界ランキング」で7位。1位の日本には敵いませんが、実は欧州野球選手権では歴代最多の22回の優勝を誇っており、欧州ではダントツの強豪なのです。WBCでは2013年、日本とともにベスト4まで進出しました。
小さくても熱い野球コミュニティ
そんなオランダの野球界は、コミュニティこそ小さいものの、熱心なファンが多く見られます。オランダ南部のオースターハウトを拠点とする野球クラブ「Oosterhout Twins(オースターハウト・ツインズ)」のマルティン・アールダイク氏は、そんなファンの1人。小学生のときに父親の仕事の関係で日本に住んでいた経験があり、そこで野球の魅力にとりつかれたといいます。

「野球は統計に基づく戦術的なスポーツなので、とても面白いですね」と言うアールダイク氏は、25歳までオースターハウト・ツインズでプレーヤーとして活躍した後、現在はスポンサーとして同クラブを支えています。WBC の開幕中は、メンバーと夜中に集まって試合を観戦するという熱狂ぶり。日本のプロ野球カードもまだ集めているのだそうです。
親子代々野球ファンという人たちも多く、クラブの集まりには3世代で参加しているメンバーも見かけます。同クラブ出身で、米メジャーリーグや日本のプロ野球界で活躍したリック・バンデンハーク氏も、熱狂的な野球ファンの父の影響で野球を始めたといいます。
同氏は福岡ソフトバンクホークスと東京ヤクルトスワローズで投手として活躍した後、2022年に引退し、現在はオランダで子どもの野球チームのトレーナーを務めたり、欧州野球の国際交流をサポートしたりしています。また、自らのキャリアや国際経験をもとに、スピーカーとしても活動の場を広げています。

バンデンハーク氏とともに米メジャーリーグや日本のプロ野球界で活躍した選手としては、キュラソー島出身のウラディミール・バレンティン氏が有名です。彼は2011~19年に東京ヤクルトスワローズ、2020~21年に福岡ソフトバンクホークスに在籍していました。
一方、日本からオランダに渡り、オランダリーグでプレーした選手もいます。元阪神タイガース、東北楽天ゴールデンイーグルスの上園啓史氏は、2016年にオランダの「De Glaskoning Twins(デ・フラスコーニング・ツインズ)」などで活躍。ほかにも元ソフトバンクホークスの吉村裕基氏や山下大輔氏がオースターハウト・ツインズに在籍し、オランダ野球界に刺激を与えました。
オースターハウト・ツインズは日本との交流に積極的で、2021年にはプロ野球独立リーグ・ルートインBCリーグ(Baseball Challenge League)に所属する「茨城アストロプラネッツ」と業務提携。同年には若手投手の大場駿太選手と中村泰成選手がオランダに派遣されました。

3回目の日本×オランダ戦、日蘭交流の強化へ
今年3月5-6日に大阪の京セラドームで開催される日本対オランダ戦も、オランダの熱いファンたちは心待ちにしています。
オランダチームがジャパンシリーズで日本と対戦するのは、今回が2回目。東京ドームで開催された2016年には、大谷翔平選手を含む侍ジャパンが、僅差で勝利しました。3月の試合は侍ジャパンにとって2025年の初戦となり、若手選手主体で臨むと伝えられています。
オランダチームは試合に先立ち、「大阪・関西万博(Expo 2025 )」のオランダパビリオンを訪問する予定です。このパビリオンのテーマは「コモングラウンド」。多様な人々が知恵や意見を持ち寄って、ともに問題を解決するための共通の基盤を表しています。オランダチームはこの「コモングラウンド」のロゴを袖に、試合に臨みます。
オランダ領事館のマーク・カウパース総領事は、「スポーツには人々を結びつける特別な力があり、野球はその精神を完璧に体現しています。『大阪・関西万博 Expo 2025』が『いのち輝く未来社会のデザイン』を掲げるように、このシリーズも競技、敬意、そして相互の称賛を通じて、両国の絆を深める場となります」とコメント。試合を通じた両国の関係強化に期待感を示しました。